ヨハネス・イッテンの造形教育

イッテンの独特の教育法は、現在でもファンが多く、教育学の立場からの論文も多く見られます。ギャラリーで学生に解説をすると、やはり一番人気はイッテン先生です。特に女の子に人気が高いのはバウハウス時代と同じですね。当時、イッテン先生の注意をひくために失神のフリをした女学生がいたというエピソードがあるほどです。性別も年齢も超え多くの人がイッテン先生に学んでみたいと思うのも、現代の人々が持つ渇きに訴えかけるなにかがそこにあるからなのでしょう。教育改革が叫ばれ続けている昨今、イッテンの教育論は、恐らくますます注目されるはずです。日本語でイッテンの教育論にふれられるのは、この2冊。



2-1『造形芸術の基礎−バウハウスにおける美術教育』
   ヨハネス・イッテン著/手塚又四郎訳
   美術出版社:1970年   絶版


副題に「バウハウスにおける」とありますが、これは、バウハウス前後も含めた彼の実践的教育論です。具体例が図版と共に豊富に紹介されているため、教育関係者ではなくとも楽しめます。生徒の立場でも、先生の立場でも、あるいは親の立場でも。生徒たちの感覚を研ぎ澄ませること、彼らの意欲を引き出し高めることは、美術教育者だけの関心事ではありません。とりあげられているのは造形教育ですが、読んだ人は、ここに美術を超えた教育理念が語られていることがわかるでしょう。この本が絶版であることは、本当に残念です。お近くの図書館で探してみて下さい。


2-2『色彩論』 ヨハネス・イッテン著/大智浩訳
   美術出版社
   ISBN:4-568-52004-5

書店の「デザイン」の棚に並んでいることが多く、手に入りやすい本です。未だ絶版にならないのは、この本が色彩論の基礎として多くの美術学校で使われているから。この本は実際には要約版で、本来は、イッテンのテキスト中で例にあげた絵画が参照図版として豊富に載っていました。日本語版でも1964年(1974年に改訂新版)に限定で完全版が出ています。要約版にも、色環や色彩対比の図版などはカラーで掲載されているので心配ありませんが、より詳しく知りたい人は、図書館で『色彩の芸術』(ヨハネス・イッテン著/大智浩・手塚又四郎訳、美術出版社)を探してみて下さい。

Last Update : 2001/10/01